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2009~2013年タラ号海洋プロジェクト

© Tara Expeditions

20099月に始まった、タラ号の第8回および第9回調査(タラ号海洋プロジェクトおよびタラ号北極圏プロジェクト)では、3年かけて航海しながら地球温暖化がプランクトンやサンゴ礁システムに与える影響を明らかにすることを目的としていました。

海上での938日にわたる大冒険は、地中海から大西洋、インド洋、太平洋、さらには北極海と南極海へと及びました。冒険の終わりには、乗組員として参加した250人のすべての科学者、アーティスト、ジャーナリストたちから「ミッション完了!」の声が心の奥から湧き上がりました。35カ国の異なる国籍からの人々が、2009年からタラ号の船上(そして陸上)での生活を共にしたのです。

 

フランス国立科学研究センター(CNRS)、欧州分子生物学研究所(EMBL)、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)、そして多くの公共機関や民間からの支援を受け、調査の科学責任者である生物学者エリック・カルセンティと船主でタラ号プロジェクトの責任者エティエンヌ・ブルゴワが共同で主導したこのプロジェクトの目的は明確でした。両半球とすべての大洋においてプランクトンの生態系を研究し、とりわけそこから貴重なゲノムを発見すること、そしてサンゴについて包括的な研究をすることです。

漂流する有機体、動物、植物、海藻、ウィルスや細菌からなるプランクトン(ギリシャ語プランクトス「漂う、さまよう」を語源とする)は、地球上の気候的、生物地球科学的循環において欠かせない鎖の1つであり、地球に27億年前に誕生した単細胞動物のうちの80%を占めています。

この考えを原点としたエリック・カルセンティの情熱は、未知の世界の最前線に身を置くことでさらにかき立てられます。「プランクトンの起源や進化、海から別の海へと移動しながらの変態することについて、もっとよく知りたいというところから始まったのです。プランクトンの分布や生物多様性はどうなっているのだろう?これらすべての生物の世界は結びついているのだろうか? 温度、塩分濃度、酸性度といった環境の物理化学的パラメーターはこの風変わりな生物たちにどんな影響を与えるのだろう?」

これらの問いに答えるために、タラ号海洋プロジェクトはゲノム学、定量的イメージング、生物学、生物地球科学、生物地理学、海洋学、生物物理学、遺伝学、生命情報学などの専門家の協力を仰ぎました。稀に見る学際性です。「このような革命的な側面も、このプロジェクトの特長なのです。」とエリック・カルセンティは強調します。

 

1997年、NASAは初めてプランクトンの葉緑素の生産量についての世界的な推計を出し、この光合成プロセスによってプランクトンが地球の大気の調節に果たしている役割を示しました。タラ号海洋プロジェクトは、タラ号によって収集された莫大なデータを用いて、この認識をより明確にしました。プロジェクトの研究者たちは2万7千ものサンプルを採取しました。これはミクロの世界における大きな一歩であり、これまで全く知られていなかったプランクトンのパノラマを明らかにするものです。しかしながら50万種のプランクトンがこれまで発見されたとはいえ、エリック・カルセンティによれば「95%の微小有機体はまだ発見されていない」のです。

「生命情報学の手法を用いることで、バクテリアの代謝活動が観測地点によって大きくに異なることが確認されました。」とカルセンティは付け加えています。これにより、様々な生態系を数多くの観測地点でモデリングすることが不可欠なものとなりました。「モデリングは極めて重要です。モデリングにより、海洋の変化や様々な生態系の構成、そしてその生態系の地理的分布を予測することができます。地球規模で急速な酸性化と温暖化が進んでいる今、非常に有用です。」原生生物専門家、生物学者コロンバン・デ・バルガス(フランス国立科学研究センター)

タラ号海洋プロジェクトにより、様々な生態系があらゆる次元の負荷に耐えている現在、海の生命が気候変動にどのように対処しているのかを推定できるようになりました。「微小有機体の分布は部分的には環境や緯度、海流によって決まります。モデリングは海の生物の変化を気候変動と関づけて予測する際に役に立つはずです。」と、カルセンティは言います。

「プランクトンには莫大な数のウィルスが寄生しており、温暖化に適応し、酸素の半分を作り続け、CO2の半分を吸着することによって温室効果を緩和していることが確認されました。最終的な結果として、プランクトンの生物多様性と複雑性を以前より明確に捉えることができるようになりました。タラ号海洋プロジェクトでこれまで分析されたもののうち、60~80%の遺伝子や桿菌(棒状または円筒形の細菌)が未知のものでした。これらのデータは重要です。プランクトンの構成が変化すると、地球の大気のバランスも影響を受けるからです。」数字で見るタラ号海洋プロジェクト

 

調査したサンゴ礁はおおむね健康

タラ号海洋プロジェクトのもう1つの目的は、サンゴの生態系の健康状態を調査することでした。調査のなかでも特に困難な部分です。ジブチ、カルガドス・カラホス諸島、マヨット島、ガンビエ諸島を中心とした102地点で調査が行われました。調査対象のサンゴ礁は、おおむね良好な健康状態にあることが確認され、様々な温度ストレスや温度上昇に対して驚くべき耐性を持っていることが明らかになりました。しかしながら、海水の酸化とオニヒトデの顕著な増加が心配されています。現在も進行中の分析により、今後起こり得るさらなる水温上昇にサンゴ礁が耐えられるかどうかが明らかにされる予定です。

タラ号海洋プロジェクトは他にも、驚くような発見をもたらしました。そのうちの1つはまさに驚愕すべきものでした。2011年1月の北極海周航時、地球上でも文明からかけ離れたこの海域で、なんとプラスチックの存在が確認されたのです。当時採取されたサンプルは、1平方kmあたり956~42,826個のプラスチック片を含んでいました。この汚染が人間の健康や動物、鳥、海性哺乳類にもたらす危険性を調べるための分析が現在も行われています。

「タラ号海洋プロジェクトはあらゆる面において革命的な調査でした。採取サンプルの分析には非常に長い時間がかかります。少なくとも20年はかかるでしょう。」と科学コーディネーター、ガビー・ゴルスキーは述べています。調査は今も研究所で進行中です。

パートナー
  • Oceans by Disney
  • agnès b.
  • Fondation prince Albert II de Monaco
  • Serge Ferrari
  • UNESCO – IOC
  • BillerudKorsnäs
  • CNRS
  • University of Tsukuba